やまと心

やまと心

日本人は古来より桜を愛してきました。

歴史上はじめて桜を思わせる記録が出てくるのは、日本最古の歴史書「古事記」に書かれている「木花之佐久夜毘売」{このはなさくやひめ}という神様で、この神様は富士山の守護神とされ、とても美人ではありましたが、短命で若くして死んでしまいます。これはまるで、桜の木の象徴のような神様だったようです。

藤原正彦著書「国家の品格」の中では、日本人は「もののあわれ」すなわち人間のはかなさや、悠久の自然の中で移ろいゆくものには美を発見しますが、日本文学者のドナルド・キーン氏によると、これは日本人独特の感性なのだそうです。

たとえば、日本人は秋の虫の声を聞くと秋の憂愁に心を静ませます。

虫の音を音楽として聴き、そこに「もののあわれ」さえ見出します。ごく普通の庶民ですらそうです。が、欧米人にとっては、稀に見る詩人を除けば、虫の声は「ノイズ」でしかなかったりするのだと、虫の声を楽しむのは、欧米にはもちろん中国や韓国にもないことだそうです。

この日本人の感性の鋭さの一例が、桜の花に対するものだと言っておられます。

桜は本当にきれいに咲くのはたったの3,4日で、あっという間に散ってしまう。

そのたった3,4日に命を懸けて潔く散っていく桜の花に、日本人は人生を投影し、そこに他の花とは別格の美しさを見出しているようですが、たとえばアメリカにも桜はありますが、アメリカ人にとって桜は「オー・ワンダフル・ビューティフル」と眺める対象に過ぎず、そこにはかない人生を投影するヒマ人はいないそうです。

日本人は自然に聖なるものを感じ、自然と調和し、自然とともに生きようとしたからこそ、そういう非常に素晴らしい自然観があり、だからこそ新道が生まれた。

この情緒が、ある意味で日本人の民族としての謙虚さを生んできたと語り、さらに日本人は自然と心を通わせるという得意技を持っていて、俳句などはその好例であるとも言う。

古来より日本人は桜の花にはかない恋や、自分の人生を重ね合わせていたのかもしれませんね。そういった歴史上の人物が見たであろう桜が今年も咲きます。

そんなことを頭の片隅に少しだけ残して頂き、さぁ~さくら見物にお出かけに成られてはいかがですか。皆様は、どんな気持ちで今年の桜をご覧になられるのでしょうね?

Keisuke